語れる夢をいくつ持っているか

「貴方は、何個の夢を語れますか?みなさん、夢は二つ以上持ってください。僕も漫画家と医者という二つの夢を持っていました。夢が一つしかないと、その夢が破れた時挫折してしまう。でも二つ以上夢があれば、そうはならないでしょ。」
(手塚治虫の言葉より)

『鉄腕アトム』や『ジャングル大帝』、『ブラックジャック』など、数多くの人気作品を世に出し、漫画の神様と呼ばれた手塚治虫の言葉です。実際に医師免許を持っていた手塚治虫は、学生時代からプロの漫画家として活動していました。そんな彼は、漫画家という職業がまだ認知されていなかった時代に安定した医師ではなく、漫画の道に進みました。

この言葉の最後の部分を切り取ると、「うまくいかなかった時のために保険をかけておこう」と言っているように感じてしまいますが、私はそのようには受け取っていません。むしろ、冒頭の「何個語れるか?」というところが重要だと捉えています。「二兎追うものは一兎もえず」という言葉もあり、何か一つ、心に決めたものに没頭していくことも決して間違いではないと思いますが、没頭できるものが沢山あるとより幅も広がり、副次的効果、相乗効果も生まれてくるものと考えています。手塚治虫の場合には、『ブラックジャック』という名作も生み出したのも、その相乗効果の一つの現れでしょう。「二兎追うものは一兎もえず」というのは、どっちつかずになるような中途半端な想いでは物事はうまくいかないという教訓を与えてくれていると思いますが、「夢」をいくつ持っていても、それぞれに全力で没頭できるのであれば、他人に語れるぐらいになれるのであれば、非常に価値のあるものだと確信しています。

自分の「夢」を掲げる時に、自社の「ビジョン」を掲げる時に、より素晴らしいものを掲げようとしてしまって、考え込んでしまい、時間ばかりが過ぎていく事例をいくつも見てきました。誰よりも究めよう(究めなくてはいけない)と思うがあまり、「夢」の設定自体に悩んでしまっていて、なかなか自分の「夢」を語れない方も多いようです。1万人(社)の中でNo.1になろうと考えると精神的な負担は大きくなります。そんな時、私はこのように考えることをお勧めしています。「小学校時代のクラスでNo.1のものを3つ手に入れる。」それは何でも構いません。たとえ、早起きであろうと、昆虫博士であろうと。ただ、No.1ということが重要になります。小学校のクラスNo.1というのは誰もがイメージできる数字。1クラスがだいたい35人と想定すると、3つのNo.1があるということは、1/35×1/35×1/35=1/42,875ということになります。なんと4万人以上の中で一人の存在になれることと同じ効果。3つの得意技を持つと、それぐらい魅力の溢れる人物(企業)になることができるのだと考えています。その場に留まらず、今すぐ一歩を踏み出しましょう。

余談になりますが、手塚治虫は人生の岐路に立った時、母親から好きな道を選択するように勧められたそうです。また、医学生時代の先生からは、医者よりも漫画家になった方が、より多くの人々(子供たち)を励まし、救えるのではないかと導かれたそうです。いずれにせよ、中途半端な気持ちでなく、全力で「夢」に没頭してこそ、実現できる「夢」になるのだと思います。
[ビジネスプロデューサー 古澤秀彦]

毎週月曜日、「夢創造実現Project」と題し、夢にまつわる名言からの学びを考えてまいります。